
はじめに:ETCはどうして生まれたか
イーサリアムクラシック(ETC)は、2016年の「The DAO事件」をきっかけに誕生した仮想通貨です。イーサリアム(ETH)がその事件を受けて過去のハッキング被害を帳消しにする形でブロックチェーンを改変した(ハードフォーク)のに対し、一部のコミュニティは「台帳は不変であるべき」という原則を守るべきだ、という立場をとりました。ETCはその「フォーク前のイーサリアム」の歴史をそのまま保ち、改変を受け入れなかったチェーンが今のETCです。
つまり、ETCは「コードが法」であり、どんな事情があっても過去のトランザクションを消したり改ざんしたりしないという原則を重んじるプロジェクトです。
クトです。
ETC の基本仕様:ETH と共通するところも含めて
| 項目 | ETC(イーサリアムクラシック) | ETH(イーサリアム) |
|---|---|---|
| 発足時点 | イーサリアムからの分岐:2016年7月 The DAO ハードフォークによる | 元のイーサリアムネットワーク。ETC が分岐した後も継続進化 |
| ネットワークの基本機能 | スマートコントラクト、分散型アプリケーション(dApps)の実行可能。EVM(Ethereum Virtual Machine)を含む。 | 同様にスマートコントラクトと dApps の中心プラットフォーム。EVM の中心的チェーン |
| コンセンサス方式 | Proof of Work(PoW) を維持。マイニング方式によりブロックが作られる。 | 2022年9月に Proof of Stake(PoS) に移行(The Merge)。マイナーではなく、ステーカーがネットワークを支える方式へ。 |
| 通貨発行量(供給量) | 上限あり:およそ 2億1,000万ETC前後(210〜230百万ETC程度) | 上限なし。一定のインフレ率あり。PoS の報酬設計や利用手数料バーンなどで供給管理を行っているが、固定の上限は設けられていない。 |
| 開発哲学 | 不変性(immutability)を最重視。過去の履歴改ざんを否定。「Code is Law」の原則。 | 改変可能性をある程度許容し、ネットワークのセキュリティ/スケーラビリティを高めるためにアップグレードを続けている。PoS への移行もその一環。 |
| エネルギー消費・環境負荷 | PoW のままなので、マイニングによる電力消費があり、ETH の PoS 移行後に比べると環境負荷は相対的に高め。 | PoS 移行後、エネルギー消費が大幅に低下。ブロック生成の方式・バリデータ報酬体系なども変更。 |
ETC の特徴・メリット
初心者の方向けに、「ETC がどんな強みをもっているか」を整理します。
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不変性・信念としての「コードは法」
ETC を支持するユーザーの多くは、分岐前の Ethereum の全履歴を保持する「過去も含めて改ざんしない」という原則を重要視しています。特に、The DAO ハッキングの記録を消さずに残すという点が象徴的です。 -
スマートコントラクトと dApps の利用可能性
EVM を使えるため、Ethereum と同じく分散型アプリケーションを構築することができます。他のチェーンとの互換性や、トークン発行、スマートコントラクト実行などの機能が備わっているため、技術的な柔軟性があります。 -
固定供給による希少性の可能性
発行上限があり、それ以上は生成されないことが設計に組み込まれています(約2億強)。このため供給枠が限られることで、需要が高まれば価格が供給量に対して敏感になることがあります。 -
セキュリティと分散性に対する信頼性重視
フォーク後も PoW を維持することで、マイナーによるネットワーク保護が行われています。また、ETC は「特定の中央組織による制御を強めすぎない」ことを目指すコミュニティが根強いです。
ETC の現在と未来
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開発アップデート:ETC もネットワーク強化やセキュリティ改善のためのアップグレードを続けており、ノードの挙動・ETChash やマイニング手法の改良が進行中。
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コミュニティによる支持:信念を持って不変性を守るコミュニティが根強く、その原則がプロジェクトのアイデンティティになっているため、支持を失いにくい側面あり。
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市場での位置づけ:時価総額や取引量では Ethereum に大きく遅れをとっていますが、PoW スマートコントラクトチェーンとしての存在感や、ETH の PoS 移行後に PoW を維持するチェーンを求めるマイナーや利用者からの注目がある。
まとめ
イーサリアムクラシック(ETC)は、イーサリアムから派生した通貨でありながら、「不変性を守る」という強い信念を持ち続けているプロジェクトです。イーサリアム(ETH)との比較で言えば:
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ETH は技術的な進化・スケーラビリティ・利用範囲で先を行くが、改変やアップグレードを受け入れる姿勢が強い。
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ETC は PoW を維持し、過去の履歴を改ざんしないことを重視するため、技術的には保守的だが、理念重視のユーザーには支持される。
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