
「イーサリアムはすごいけれど、取引手数料が高くて使いにくい…」――そんな声をよく聞きます。Polygon(ポリゴン/MATIC)は、まさにこの課題を解決することを目指したプロジェクトです。
本記事では、Polygon がどんな技術でどんな問題を解決するのかを、初心者にも理解しやすく解説します。また、イーサリアムとの違いや使い分けもはっきり示しますので、「どちらを使うか・どちらに投資するか」の判断材料にもなるはずです。
- Polygon(ポリゴン/MATIC)の基本
- なぜ Polygon を使うのか?主なメリット
- イーサリアム(ETH)との比較:Polygon と Ethereum はどう違うか?
- Polygon の技術的な構造と注意点
- まとめ
Polygon(ポリゴン/MATIC)の基本
まずは Polygon の基礎を押さえましょう。
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Polygon(旧称 Matic Network)は、2017年に設立されたプロジェクトで、2020年頃から主流のスケーリング・ソリューションとして動き始めました。
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ネイティブトークンは MATIC(マティック)。トランザクション手数料の支払い、ネットワークの保護(ステーキング)、ガバナンスなどに使われます。
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Polygon は「Ethereum と互換性のあるチェーン」でありつつ、Ethereum のメインネットの混雑や高コストを軽減する補助的なネットワーク(Layer-2/サイドチェーンとしての役割)を果たします。
なぜ Polygon を使うのか?主なメリット
Polygon を選ぶ理由は、以下のようなポイントが挙げられます:
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安い手数料と高速な処理
Ethereum ネットワークが混んでいるときはガス代が非常に高くなりますが、Polygon 上では取引コストが大幅に低く抑えられています。例えば、数ドル〜数十ドルかかる Ethereum のトランザクションが、Polygon では数セントから数十セントで済むこともあります。 -
取引速度の向上
トランザクションの処理速度も速く、ブロックの生成時間や確認時間が Ethereum より短いケースが多いです。これにより、小規模取引や頻繁な操作をする dApps を使いたい人にとってストレスが少ない環境が提供されています。 -
Ethereum のエコシステムとの互換性
Polygon は Ethereum と互換性があり、スマートコントラクト/ERC-20 トークンなどの多くの仕組みをそのまま利用できるため、Ethereum 上で動くアプリケーションを Polygon に拡張したり移行したりすることが比較的容易です。 -
ステーキングとガバナンス
MATIC をステークすることでネットワークの安全性に寄与し、報酬を受け取ることができます。また、ネットワークの運営・アップデート案に参加する投票権を持つこともあります。 -
多様なスケーリング技術を取り入れている
Polygon は、「サイドチェーン」「Plasma フレームワーク」「Zero-Knowledge 巻き上げ(ZK rollups)」など、さまざまな技術を使ってスケーラビリティの改善に取り組んでいます。
イーサリアム(ETH)との比較:Polygon と Ethereum はどう違うか?
Ethereum と比べて Polygon がどこで優れているか、どんな点で異なるかを整理します。
| 比較項目 | Ethereum(ETH) | Polygon(MATIC) |
|---|---|---|
| セキュリティ/分散性 | 長い稼働歴と非常に多くのバリデータ・ノードを持ち、ネットワークの強度・信頼性が非常に高い。PoS 移行後もその優位性は残る。 | Polygon は比較的新しいネットワークであり、Validator の数・ノード分布などで分散性や安全性の点で批判を受けることもある。 |
| 手数料(Gas) | 混雑時には非常に高くなる。少額取引や頻繁な操作には不向きなことがある。 | 通常はかなり低い。小さい取引でもコストを意識せずに使いやすい。 |
| 取引速度と処理能力(TPS) | 処理能力改善中だが、高負荷時には遅延や混雑が発生しやすい。 | ポリゴンは高いTPSを目指しており、実績として Ethereum を上回る数字を出すケースも。トランザクション処理が速いため、ユーザー体験が良い。 |
| エネルギー消費 | 現在は Proof of Stake に移行しており、以前の PoW 時代と比べて大幅に消費電力を下げている。 | 初めから PoS 対応であり、万全とは言わないが比較的低コスト・低消耗でネットワークを維持できる設計。 |
| 開発・エコシステムの広さ | DeFi、NFT、スマートコントラクトアプリなど非常に豊富。多くのプロジェクトが Ethereum を第一選択とする。 | Polygon は成長中で、さまざまな dApps・プロジェクトが移行・利用を始めているが、Ethereum ほど多数ではない。コストや使いやすさを重視するユーザー/プロジェクトには人気。 |
Polygon の技術的な構造と注意点
Polygon は多くのメリットを持っていますが、同時に注意すべき点もあります。技術的な構造とその落とし穴を見ておきましょう。
技術構造のポイント
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Polygon SDK
開発者が目的に応じたサイドチェーンやロールアップを構築できるフレームワークです。必要に応じて「軽いチェーン」「高速な処理」「特定用途向きチェーン」など設計可能です。 -
ステーキングとバリデーター
ネットワークを安全に保つ鍵として、MATIC をステークするバリデーターが取引の承認を行います。報酬も得られますが、ステークやバリデーター運営には規模や要件があるため、参入障壁があります。 -
ブリッジ機能
Ethereum と Polygon の間で資産(ETH や ERC-20 トークンなど)を橋渡し(ブリッジ)できる機能があります。これにより資産を Polygon に移して低手数料で操作し、必要があればまた Ethereum に戻す、という使い方が可能です。
注意すべき点・リスク
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中央化の懸念
Polygon のバリデーターの数や運営の決定プロセスにおいて、「十分に分散されていないのでは」という批判があります。ネットワークの安全性・検閲耐性などで Ethereum に比べて脆弱と見る意見も。 -
ブリッジのリスク
Ethereum-Polygon 間の資産移動にはブリッジを使いますが、過去にブリッジでのセキュリティ事故(資産がロックされたり盗まれたりするなど)が起きた例が仮想通貨業界には存在します。資産を動かすときはそのリスクを理解しておく必要があります。 -
ユーザー体験のギャップ
手数料や速度は優れているものの、「Polygon 用のウォレット設定」「トークンの取り扱い」「NFTやアプリの対応可否」など、Ethereum と比べてサポートが限定的なものがあったり、ユーザーが混乱するケースがあったりします。 -
競争の激化
Polygon と似た目的を持つ他の Layer-2 ソリューション(Optimism、Arbitrum、zkSync など)や他チェーン(Solana, Avalanche, etc.)との競争が非常に激しく、Polygon が常に優位とは限りません。開発・技術・ユーザー支持での差が将来に影響を与える可能性があります。
まとめ
Polygon(MATIC)は、Ethereum の“混雑・高コスト”という弱点を補う存在であり、取引を速く・手数料を低くすることを重視する人たちにとって魅力的な選択肢です。
ただし、完全な “Ethereum の代替” というよりは、“Ethereum を補完するネットワーク”というイメージの方が近いです。
イーサリアムに関しては過去記事でも紹介しています。